第二章 最大栄養による最大健康

50年前の基準が今でも使われている不思議

日本の厚生省では一日当たりの所要量という言葉を用いるようですが、イギリスやアメリカでは、正確には、一日当たり推奨すべき摂取量(Recommended Daily Allowance)と呼ばれています。この英語の頭文字からRDAと呼ばれていますが、要するに、これだけ摂取していれば取りあえず安心だという目安です。このRDAが実はなかなかのくせ者で、現在世界的に目安として使われている数字は、実は半世紀以上も大昔の1941年5月にアメリカで生まれたものなのです。その生みの親は、アメリカの国立科学アカデミーの委員会で、その背景としては、当時のアメリカ人の平均的食生活における栄養素の量的不足についてこの委員会が心配したからです。当然ながら、当時の先端的知識を基礎にして作られた数字です。「当時」というのは、現在ではほとんど耳にしない病気、例えば壊血病(ビタミンC不足による)、ペラグラ(ナイアシン不足による)、脚気(ビタミンB1不足による)などの欠乏症を予防する目的で設定された数値です。その時代の、その目的のためには、それなりに有効で、それなりの貢献をしたことは事実です。しかし次に述べる2つの事実がやがてしだいに明らかになってきました。まず、RDAはあくまで平均値であり、国民大衆という具合に全体として対象をとらえて、その欠乏症を減らそうという発想ですから、当然ながら各個人という考えは入っていません。ところが、この個人差が実はとてもに大きいことが後でわかってくるのです。また他方では、さらに悪いことに、欠乏症を防ぐことに狙いがあったためRDAの数値は低めに設定されています。必要な栄養素を充分に摂って健康を最大に保つという積極的な目的意識はなかったからです。

およそ10年後の1951年頃からこれに対する批判が始まりました。数値決定の基礎となった各種の研究テストに使われた時間が6ケ月から9ケ月というのはいかにも短かすぎるというのが批判のポイントでした。人間の平均寿命の1%にも満たない超短期間のテストで、いったい何がわかるのかという批判です。まことに当を得た批判です。また、動物実験を例にとっても、ほんの少量の投与を短期間続けて、それなりの良い結果を得たとしても、それがその動物の生涯にわたってどのように影響するかはわからないではないか、と言うわけです。この指摘も、筆者としては、やはり当を得た指摘だと思います。

前述のとおり、RDAはあくまで「最低基準」に過ぎません。例えば、ガンとか冠状動脈疾患のような慢性疾患の場合に、それを防ぐのに必須の栄養素のレベルを考える場合には、目安にさえもならないというのが実状です。これをサラリーマンの給料に例えれば、最低賃金のようなもので、なんとか最低生活で生きてはいけるかも知れませんが、最低賃金が保証する「生活の質」は問題にはされていないというわけです。ましてや貯金など考えることすら不可能です。何か万一の出費が発生した場合には、それに対する対応はとてもできません。しかも、あくまで平均値ですから、各個人の特殊事情には応じることはできません。特定の個人、例えば読者自身、の特殊事情で特定の栄養素が必要という場合にはまったく頼りにはなりません。また、頼りにしてはならないものと考えるべきです。

ここまではRDAの生まれた背景です。その後の事情について少し触れます。最も新しい数字、従って、現在使用中の数字は一九八九年に、RDAが五十年前に初めて生まれた時の生みの親、すなわち、アメリカの国立科学アカデミーによって改訂されたものです。これには少なくとも個人差という概念が初めて少しは採用されています。例えば、「喫煙者はビタミンCを追加して摂取すべし」というものです。喫煙は体内の抗酸化物質(特にビタミンC)の貯金を減らします。だから、喫煙者の中には、血中ビタミンCが壊血病スレスレの人々もいるという認識です。タバコの煙に含まれる活性酸素が引き起こすコレステロールの酸化がこれに加わると、なぜ喫煙者に冠状動脈疾患が多いのかという理由の説明にはなります。

喫煙者にとっての問題はビタミンC不足だけではありません。ビタミンE、ベータカロチン、亜鉛、ビタミンB6の不足もあり、それが喫煙者の健康を害し、その余命を縮めるのです。喫煙者にとってのRDAは別途に定めるべきと筆者は考えますが、その実現までにこれから何年掛かるのか、筆者には答えられません。

飲酒についてはどうでしょう。一般論ですが、お酒をたくさん飲む人は食事も十分に摂らないことが多いようです。結果として、必要な栄養素の摂取も少なくなります。葉酸、ビタミンB1、ビタミンB6、ベータカロチン、亜鉛、ビタミンC等が不足になりがちです。お酒を飲む人のRDAが飲まない人のRDAより高くあるべきなのは喫煙者の場合と同じです。

運動選手、妊婦、授乳中の母親、老人などはどうでしょう。特に老人の場合は消費エネルギーも低下するので食も細くなり、一般的には、消化吸収も悪くなります。鉛害、水銀、排気ガス、化学溶剤、殺虫剤、除草剤等々の汚染環境に曝される人々はどうでしょう。さらには、何百万人ものダイエット(減量)をする人々はどうでしょう。疑問は限りなく続きます。ダイエットの場合、一般的には相当多くの栄養素の欠乏が考えられます。充分に食事を摂らなかったり、反対にジャンクフッドを「やけ食い」したりで、食生活はメチャクチャです。RDAは一体ほんとうに役に立つのでしょうか?

何度も繰り返しになりますが、RDAはあくまで平均値を「目安」として示すだけです。はるかな昔にコロンブスが大航海をした時のような古典的な栄養欠乏症を考える場合はそれなりの目安にはなります。しかし、個人の事情は考慮に入っていません。個人の事情を考慮して、各個人の生活実態に合わせてその個人に必要なRDAを測定することは技術的には不可能ではありません。しかし、経済的コスト的にはどうでしょうか。極端な比較ではありますが、費用対効果の面ですぐれた自家用の測定機器を開発するか、あるいはRDAを無視して、取りあえずもっと高いレベルの栄養素を摂るかの、2つに1つの選択になるのでしょう。筆者としては、後者を選ぶことは言うまでもありません。その理由は、最新科学の進歩によって研究はどんどん進んでいますので、健康をベストに保つために必要な情報はいつでも入手可能です。そのために特にお金が掛かるわけでもありません。問題とされる栄養素についても、健康食品として安全なかたちでの入手は可能であり、決して難しくはありません。

第二章 最大栄養による最大健康

クレイトン博士の「英国流医食同源」 〜発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる〜(翻訳版)の内容を転載しています。

当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」〜発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる〜』の内容を転載しております。

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