もう1つのガンと戦う栄養素、必須脂肪酸

大部分の抗ガン物質が果物と野菜由来であることはすでに述べましたが、この項を、敢えて多価不飽和脂肪酸から始めたいと思います。多価不飽和脂肪酸は野菜にも魚油にも含まれています。ガンについての基本ルールには反するのですが、ガン細胞に関する自然の驚異をかいま見せる部分で、たいそう興味深いものです。どうすれば、栄養的アプローチによってガン細胞を発見し、攻撃を加えることが可能かというのがテーマです。

多価不飽和脂肪酸は身体中の細胞の細胞膜に集中してみられますが、これは活性酸素による酸化に対して非常に脆い物質です。多価不飽和脂肪酸の分子が酸化されると、それ自身が活性酸素になります。そして例の悪循環が始まります。他の多価不飽和脂肪酸を酸化させ、酸化された多価不飽和脂肪酸がまた他の多価不飽和脂肪酸を酸化するというおなじみの連鎖反応です。この連鎖反応はまもなく「なだれ現象」を起こします。そして、ストップさせない限り、細胞自身を殺します。ビタミンEのような抗酸化物質がこの連鎖反応を止めますので、われわれの正常な細胞にはこのような連鎖反応はふつう起こりません。しかし、多価不飽和脂肪酸の場合は、ビタミンEとは異なり、細胞膜の中で多価不飽和脂肪酸どうしではお互いに離ればなれに分画されているからです。もしも、この分画の隔壁が、細胞破壊によって分画がなくなって、多価不飽和脂肪酸どうしの接触が可能になった場合には、この連鎖反応が発生します。しかもこの場合の酸化スピードはものすごく早くなります。

ガン細胞は、さまざまな点で正常な細胞とは異なります。それらの相違点の中でも最も重要な点は、細胞膜に保有する多価不飽和脂肪酸の量が、正常な細胞より少ないということです。ガン細胞は、多価不飽和脂肪酸を処理する能力が低いのです。従って、多価不飽和脂肪酸を与えられると、ガン細胞は、異常な量の多価不飽和脂肪酸由来の活性酸素を生み出します。ガン細胞も自分を活性酸素から防御するわけですが、その防御方法は、正常細胞の方法とは異なります。ガン細胞が持っている抗酸化物質の量が少ないからではありません。むしろ通常を上回る量のビタミンEを持っています。抗酸化酵素についても同様です。ガン細胞が、その細胞膜の多価不飽和脂肪酸を酸化から守れない理由は、正常な細胞では多価不飽和脂肪酸を分画している防壁が、ガン細胞の場合に正常に機能しないのがその理由と思われます。

細胞中の多価不飽和脂肪酸由来の活性酸素量が増加すると、細胞分裂が停止します。増加がさらに進むと、細胞自身を殺す大量の活性酸素の「なだれ現象」が起こるわけです。ガン細胞が多価不飽和脂肪酸を安全に貯えることができないため、しかも、多価不飽和脂肪酸由来の活性酸素に対する抵抗力が弱いため、多価不飽和脂肪酸の摂取が多い食習慣を持つ人には、ガン細胞は発生し難いというわけです。

これが意味するのは、ガン細胞の多くは宿主の身体の健康が明らかに問題化するよりずっと以前に、多価不飽和脂肪酸由来の活性酸素によって自殺に追い込まれているということです。また反対に、ガンによる脅威が現実に存在する事実をみれば、多価不飽和脂肪酸の酸化から身を守り、腫瘍になるまでの長い時間を生き延び、成長するための何らかの手段を、ガン細胞が身につけていることも充分考えられるとも言えるわけです。

実際のところ、多価不飽和脂肪酸の爆発的連鎖反応は、ガン細胞にとってはきわめて危険です。だから、ガン細胞は少なくとも4つの防御機能を持っています。その第1は、ビタミンEレベルの増加です。第2は正常細胞と比べて大量の抗酸化酵素です。第3は、正常細胞と比べて少ない量の多価不飽和脂肪酸しか取り込みません。そして、第4は多価不飽和脂肪酸の合成量で、大部分のガン細胞の合成量は、通常の細胞よりかなり低レベルなことが確認されています。

これらの4つの防御手段を組み合わせて、多価不飽和脂肪酸の量そのものを減らすか、あるいは多価不飽和脂肪酸から発生する活性酸素の量を減らすか、そのどちらかに成功したガン細胞は生き残ります。そして、多価不飽和脂肪酸の量を減らせば減らすほど、ガン細胞は悪性化し、その転移性も増加するわけです。他方、多価不飽和脂肪酸をガン細胞に与えることができれば、ガン細胞は多価不飽和脂肪酸の酸化によって自殺に追い込まれることになります。

これを別の観点から見ると、ガン細胞は常に酸化ストレスを受けているわけです。その成長の早さ、血流の少なさ、その他の理由があるからです。しかしながら、再び現実論に戻ると、生き残り、成長し、腫瘍になるガン細胞が現実に存在するわけですから、この酸化ストレスからも生き残るガン細胞が存在するのは間違いありません。抗酸化物質の生産が多いのか、抗酸化酵素なのか、それとも多価不飽和脂肪酸の合成が少ないからなのか、理由はいろいろ考えられます。酸化ストレスに耐え得ないガン細胞はたぶん生き残れません。しかし、かりに読者が超大量の抗酸化物質を食品から摂取した場合、その結果はどうなるのでしょう? 皮肉にも、ガン細胞の生き残り戦略に手を貸すことになるのでしょうか?

もしも、多価不飽和脂肪酸由来の過酸化脂質に対して、ガン細胞が過剰反応するという仮説が正しいとすれば、抗酸化物質は多価不飽和脂肪酸由来の細胞自殺を抑制することになります。この仮説は正しいのです。数は限られてはいるものの、この仮説が人間のガンの場合にも当てはまるとする証拠があるのです。勿論、この仮説は今のところ毀誉褒貶が多く、議論が伯仲しているところです。

この仮説は、同時に、鉄や銅などの酸化促進性が多価不飽和脂肪酸のガン細胞抑止能力を増強するということを強く示唆します。そして、それは事実その通りなのです。

第九章 もう1つのガンと戦う栄養素、必須脂肪酸

クレイトン博士の「英国流医食同源」 〜発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる〜(翻訳版)の内容を転載しています。

当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」〜発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる〜』の内容を転載しております。

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