現代人のほとんどはフラボノイド不足

ここに挙げた病気の多くは現代病と言えます。これらの病気が最近は異常なまで増加している事実に対する納得のいく説明は、人類の歴史が始まって以来絶え間なく繰り返されてきた食習慣、時の試練に耐え抜いてきた人間の「食の原点」から、あまりにも遠くかけ離れてしまった現代人が支払うべき「ツケ」と言えるのではないでしょうか。謙虚に考えてみる時、筆者にはそのように思えてなりません。

ホモサピエンスが進化を遂げてきた長い長い時間を通じて、人間の食習慣には多くのフラボノイドが含まれていたに違いありません。特に最近の50年間にフラボノイドの摂取が低下したという事実と、近頃われわれが目にしつつある変性疾患と炎症の増加には確かに因果関係があると思われます。免疫システムも同様です。これまで進化を遂げる間、ずっと体組織内に蓄えられてきたフラボノイドの量にアンバランスが起きているのです。それによって、何か致命的と言える抑制作用のブレーキが働かなくなっているのです。核反応炉が壊れたようにメルトダウン・シンドロームが始まっているのかも知れません。このように考えると、少なくとも、最近は菜食主義者の方が長命であるという現象の説明にはなるでしょう。

フラボノイドの最適な利用方法を理解するために、ここで少し化学の復習をしてみましょう。フラボノイドの「鍵」は、その多くが抗酸化物質として極めて高い能力を持つという点です。分子構造はビタミンEと似た構造であり、脂質の酸化を抑制する能力があります。それだけでなく、その抗酸化性にもさまざまな異なった性質があるという点も、フラボノイドがフラボノイドであるゆえんです。すなわち、これらの抗酸化性を持つ分子のそれぞれが、いずれも次に挙げる3つの性質のいずれかを持つところにあります。3つの性質とは、第1が「安定性」、2番目が「配分性」であり、3番目は「タイプ」です。

(1)フラボノイドの安定性

普通は、抗酸化物質が活性酸素を消去すると、その抗酸化物質それ自身が活性酸素になり、悪事を働きます。ある種のフラボノイドは、こうして自身が活性酸素になっても、非常に安定性が高い(悪事を働かない)ものがあります。分子構造が活性酸素を取りかこんで盾の役目を果たすように出来ているのです。だから、体内で活性酸素として悪事を働くのが防がれるのです。もちろん、すべてのフラボノイドがそのように働くわけではありません。なかには、不安定なものもあり、そういったものは、やはり悪事を働きます。西欧式の食習慣でも珍しくないフラボノイドが2種類あります。名前はクエルセチン(タマネギに多く含まれるフラボノイドの1つ)とケンフェロール(綿実油に含まれるフラボノイドの1種)の2つです。これらは強力な活性酸素の消去剤として働きます。前者が安定的ラジカルであり臨床的にもメリットが報告されているのに対して、後者は非常に不安定で、この点で、メリットはあまりありません。

(2)フラボノイドの配分性

摂取されたフラボノイドが体内でどのように配分されるかによって配分性という考え方が出てきます。ある種のフラボノイドは脂溶性でありBBB(血液脳関門)を通過して、脳内に入り込むことが可能なのに対して、他のフラボノイドは、例えば血管内壁などのように体組織の一部に蓄積されるものもあります。従って、栄養学者がその知識を十分持っていれば、この性質をうまく利用して、体内の特定の部位を狙い撃ちすることも可能になります。例えば、毛細血管内壁という特定部位を狙い撃ちして、その部位の治療効果を挙げることも、フラボノイドの配分性によっては可能になります。イチョウ・フラボン配糖体は、この目的で末梢血管や大脳血流の改善を目的として広く使わており、その仕事をきちんと遂行しています。

(3)フラボノイドのタイプ

抗酸化物質というものは、4つの異なった方法のうちの1つあるいは2つのアプローチで仕事をします。(1)あるタイプは活性酸素と直接関わり合って、それを消去するか、無害化するという仕事です。(2)別のタイプは連鎖破断を行う抗酸化物質であり、脂質ラジカルの無害化により活性酸素形成の連鎖反応をストップし、血漿中のLDLコレステロールの中と細胞膜の中の脂質に酸化ダメージによって悪循環が発生するのを防ぎます。(3)また別のタイプの抗酸化物質は遊離鉄と結合することによってこれを不活性化します。体内の遊離鉄は活性酸素の発生源です。(4)酸素そのものを無害化する方法で抗酸化物質として働くものもあります。

多くのフラボノイドは上記した各種の異なったタイプの抗酸化性のうち、少なくとも1つ以上の性質を持っています。スーパーオキシド・ラジカルを消去するフラボノイドもあれば、活性が高いため非常に危険なヒドロキシル・ラジカルを消去するものもあります。フラボノリグナンと呼ばれるフラボノイドのグループは肝臓にダメージを与えるメチル・ラジカルや三塩化メチル・ラジカルの消去が得意技です。これらはオオアザミに多く含まれておりますが、オオアザミは昔から肝臓の薬として重宝されてきたものです。

フラボノイドには、前記(3)のタイプのように体内の危険な遊離鉄あるいは遊離銅と結合して、これにより活性酸素の発生を防ぐものもありますが、非常に多くのフラボノイドはタイプ(4)の性質を持っており、酸素そのものを留置所に閉じ込めるようにして、悪事を働かせないようにする性格を持っています。このタイプのフラボノイドはアスコルビン酸、つまりビタミンCの酸化を防ぎます。果物やフルーツ・ジュースのビタミンCの酸化を防ぐ重要な働きをします。

以上の各種のタイプについて、どれが最も重要かというように、重要さについて優先順位をつけることはあまり意味がありません。あえて1つだけ言うなら、タイプ(4)の抗酸化性は消化管内部でビタミンCを破壊から守るという点で、体内に吸収されるビタミンCの量を増加させるという重要な働きは注目に値します。

第七章 いま注目の抗酸化物質

クレイトン博士の「英国流医食同源」 ~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~(翻訳版)の内容を転載しています。

当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」~発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる~』の内容を転載しております。

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