旧い必要量の30倍までは安全

栄養補助食品を誤用する可能性がないとは誰にも保証はできませんが、有毒性の問題は全体として考えれば、可能性は低いと言えます。抗酸化物質の大多数は安全です。仮に大量摂取の場合でさえ安全です。いわゆる薬品と比べれば、その安全性は比較にならぬほど高いのです。潜在的に危険性を持った微量栄養素を大量摂取した場合の身体の反応を考えてみます。一般論ですが、身体にはホメオスタシスという組織の化学的平衡状態を維持しようとするメカニズムがあり、常に組織のバランスを保とうとします。例えば亜鉛を例にしましょう。必要な亜鉛が体内に満ち足りた状態にある場合に、その上にさらに追加して亜鉛を摂取した場合、身体は消化管からの亜鉛の吸収を低下させることによって、バランスを保つわけです。一般論としては、これは銅についても同じです。

微量ミネラル系の抗酸化物質の中でも中毒性についてよく知られているのはセレニウムです。でもその毒性そのものは、ひとまず横に置きましょう。さて、セレニウムの必要摂取量(RDA)は1日当たり約60μgから100μgです。この数字より30倍の量のセレニウムがある種の病気の治療に使われた臨床例がありますが、副作用は報告されていません。一方、セレニウムの場合、その有毒摂取量は必要摂取量の40から50倍なのです。そこで比較の問題ですが、薬品として治療に用いられる普通に良く知られたものでも、その有毒量(時には致死量)は通常の処方量のわずか10倍程度です。これがいわゆる化学合成された薬品の恐ろしいところです。

セレニウム中毒の実例は数としてはわずかなものです。これに比べると、セレニウム不足の方が問題は大きいと言えましょう。極端なセレニウム欠乏症は、中国やアフリカの1部で関節炎、心臓病、不妊、甲状腺疾患等との関連で深刻です。他方、日本等のような海産物の摂取の多い国では、セレニウム欠乏などはむしろほとんど不可能と言うべきで、まず考えられません。しかし、他の国々、例えばフィンランド、ニュージーランド、イギリスなどを例にしますと、セレニウム不足は各種の健康問題の原因になっているのは事実です。フィンランドでは、肥料として農地の土壌にセレニウム塩を与えるのは農家にとって常識で、ほとんど日常業務といえるほどにさえなっています。

イギリスでは、1978年から1994年までの16年間でセレニウムの摂取量が約50%低下しました。1日当たり60μgから30μgへ低下したわけです。なぜそのような大幅低下が起こったのでしょう。その原因の1つは小麦で、カナダ産の小麦から国産のものへ切り替えられたのが原因でした。イギリス国産の小麦はセレニウム不足の土壌で育成されたものでした。イギリスで定められているセレニウムの必要摂取量は1日当たり、女性には60μg、成人男性には75μgとされています。明らかに平均的イギリス人のセレニウム摂取量は、保守的に定められたものではありますが、その保守的な必要量をさえ満たしていません。昔のイギリス人には無縁だったセレニウム欠乏症が、現在は問題化されつつあります。特に重金属を取り扱う必要のある人々や歯の充填剤としてアマルガムを使っている人々には要注意です。また、年輩者も同じく要注意でしょう。重金属は年を経る毎に体内に蓄積されていくからであり、同時に年とともに何故か微量ミネラル栄養素としての抗酸化物質の摂取が少なくなるから注意が必要とされるわけです。

セレニウム不足は高年者と特殊な職業の人々にとってだけの特有な問題とは限りません。若い人々でも「ゆゆしき問題」になり得ます。というのは、セレニウムは妊娠と重大な関係があるからです。これは人間だけでなくほとんど全ての動物について当てはまる事ですが、不妊症との関係です。人間でも動物でも、セレニウム補助食品を投与すれば、胎芽死亡率は低下し、精子の運動性が向上します。その結果、受胎率は向上します。最近のスコットランドでの研究結果では、セレニウム補助食品の投与によって精子運動性が劇的に向上した例があり、これは、とりもなおさずセレニウム補助食品投与以前の食生活がそもそもセレニウム不足であったことを物語っています。ちなみに付け加えますと、セレニウム補助食品をストップしたら、たちまち精子の運動性が「元のもくあみ」になったとのことです。

もちろん、セレニウムが不妊症の万能薬と言うつもりはありません。ビタミンEとビタミンCの不足も妊娠率の低下に関係します。理由が不明の不妊症の場合には、これらビタミンを一度は試してみる価値があると筆者は考えます。

第六章 旧い必要量の30倍までは安全

クレイトン博士の「英国流医食同源」 〜発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる〜(翻訳版)の内容を転載しています。

当コンテンツは、現代人の食生活に関する問題や身体を守る抗酸化物質に関する豊富な研究結果を元に、多くの消費者の誤解の本質を解き、健康な食生活の実践を啓蒙している、論文『クレイトン博士の「英国流医食同源」〜発ガン性物質があふれる現代を賢く生きる〜』の内容を転載しております。

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